短期間で進める契約調査。
元帳と現場の情報から、
調べる取引を見つけ、
資料の漏れを補う。

契約書、業務で利用する設備、帳簿の記録を関連付け、候補一覧に整理するイメージ

本記事は、新リース会計基準の適用に向け、効率的な契約調査を進めたい会社のご担当者様に向けた実務ガイドです。準備期間が限られる状況でも取り組めるよう、調査範囲の設定から資料の収集・照合、リース候補一覧の作成まで、具体的な進め方を紹介します。

短期間でも実践できる契約調査
この記事で扱う作業契約書等の収集・候補抽出下の六つの手順で具体的に進める
同時に進める検討|本記事では扱いませんGAAP差異分析旧・新基準の差異と自社への影響を整理

事前検討に十分な時間を取れない場合は、二つの作業を並行。検討で分かった論点を収集に反映し、集まった資料を影響検討に使います。

01収集前
1-1
元帳・業務を確認調べる取引と依頼先を探す
1-2
集める資料を決める契約と業務実態の両面から
1-3
収集管理リストを準備担当・資料・期限を決める
02回収と候補抽出
2-1
資料を回収する契約書と必要な補足資料
2-2
三つの資料を照合不足・不一致を確かめる
2-3
候補一覧を作る根拠と未確認事項を引き継ぐ

日本基準の借手側の準備を中心にした実務上の一例です。会計基準が一律に定める収集手順ではありません。

1 収集前|調べる範囲を仮置きする

1-1 元帳と業務から調べて協力を依頼する

調査の出発点|旧基準で把握済みのリース

旧基準でオペレーティング・リースとされていた借手の取引は、当初から調査範囲に含めます。既存のリース管理台帳や注記資料等を起点に、対象契約と利用状況を整理します。[1]

そのうえで、「資産の利用がありそうな取引」を元帳と業務の両面から拾います。地代家賃・リース料だけでなく、外注費・保管料・運送費・保守料なども、自社の取引内容に照らして確認します。

元帳で拾う
  • 毎月同程度の支払い、同じ取引先への継続支払い
  • 摘要や請求内訳の「レンタル」「設備利用」等の記載
業務から補う
  • 現場アンケートで、委託・サービス契約等の利用実態を確認
  • 業務委託等で、他社の資産を使う取引がないか確認
見落としを確認
  • 本社一括払い、過年度の前払い・一括払い
  • 利用開始前の契約、委託料金等に含まれる資産利用

継続支払いや摘要の語句は抽出の手掛かりです。これに当てはまる取引だけに限定せず、支払パターンや金額だけで対象外としません。

現場アンケートの聞き方

現場アンケートでは、業務委託など、一見するとリースに該当しそうにない取引を中心に確認します。「委託先等の金型・設備・車両を使っていないか」「使う資産や場所が決まっていないか」など、他社資産の利用実態を尋ね、契約名・資料の保管先・担当者も把握します。

業種別|資産の利用が含まれそうな取引

製造金型・設備

製造委託先の金型・生産設備を使って製品を作る取引

倉庫保管区画

保管委託で特定の区画・保管スペースを使う取引

運送車両

運送委託で特定の車両を使う取引

ITサーバー等

ホスティング・運用委託で特定のサーバー等を使う取引

建設重機・仮設設備

施工委託等で特定の重機・仮設設備を使う取引

調査対象を探すための例です。「特定」「専用」という呼び名だけでリースとは判断せず、契約上の権利と利用実態を確認します。

対象会社・拠点、調べる科目・取引先・業務、基準日と元帳の確認期間、依頼先を整理し、収集範囲を仮置きします。並行して進めるGAAP差異分析で新たな論点が見つかったら、アンケートの質問や収集対象を追加します。

1-2 集める契約と資料を決める

契約名と業務内容の両方から集める
賃貸借・リース契約
建物・土地車両機器・設備
委託・サービス契約
製造委託保管・輸送ITサービス
どちらの契約形式も収集対象を探す入口です。契約名に「リース」がなくても、資産の利用を含む可能性があれば確認します。

特定された資産の使用を支配する権利が、一定期間にわたり対価と交換に移転する契約は、リースを含みます。契約の名称だけでは範囲を決められません。[1]

例えば金型自社所有・仕入先所有・顧客からの預り品を区別し、自社が借りる取引と貸す取引を整理します。「専用」という呼び名だけでリースと決めず、契約上の権利と利用実態を確認します。[2]

1-3 収集計画と収集管理リストを作る

収集管理リストは、資料の依頼・回収・確認状況を管理するものです。取引先・拠点・利用内容を起点に、次の三つを記録します。契約名が不明でも登録できます。

依頼担当部署/必要資料/期限
回収保管先/回収状況/未回収理由
実態確認確認済みの事実/残る質問

「未回答」と確認済みの「該当なし」を区別し、追加依頼も同じ一覧で管理します。

2 回収と候補抽出|資料を判断につなぐ

2-1 契約書と補足資料を回収する

基本契約に、別紙・注文書・物件明細・変更覚書をひも付け、旧版と最新版を区別します。

業務資料は、必要なときに確認

契約資料だけでは利用実態が分からない場合に、現場の図面・台帳・稼働記録等の必要な部分を確認します。初めから一律に回収するのではなく、残る論点に応じて現場に照会します。

契約書・更新書面がない場合は?

書面を作成していない、所在が不明、更新時に別の書面を締結していない場合も、対象から外さず、資料と照会で現在の取決めを確認します。

契約実態を補う二つの手掛かり
残っている資料旧契約の更新条項/注文書・メール・稟議/請求・支払記録/図面・利用記録
関係者への照会現場・契約担当者に確認
必要に応じて契約相手にも確認
現在の契約条件を整理対象資産・利用条件/期間・更新・解約/対価・条件変更

支払い・利用が続くことだけで、旧条件がすべて継続しているとは扱いません。

資料と関係者への照会を組み合わせ、現在の契約条件を確認します。「契約書の未回収」と「契約実態の未確認」は分けて管理します。

会計基準上の契約には、法的な強制力のある権利・義務を生じさせる口頭・取引慣行による取決めも含まれます。確認できた内容と未確認事項を記録します。[1]

2-2 三つの資料を突き合わせる

三つの情報源を照合し、漏れを補う
契約書・補足資料現場の図面・記録も含む
元帳・明細費用・支払等の記録
法務・現場の一覧部署が管理する取引
取引先・拠点・対象物で照合各資料にある取引が、ほかの資料と対応するか確認
支払いあり・契約資料なし追加回収、または代替資料と照会で実態を確認
一覧にあり・元帳に見当たらない前払い・料金への包含・利用開始前・終了済み等を確認
追加確認再照合収集範囲の見直し
同じ取引が三つの資料で対応するか確かめ、不足・不一致は追加確認して再照合します。不一致だけで対象外とはしません。

本社一括払い・取引先名の違い・過年度一括払いにも注意し、前払費用等の残高明細や物件台帳で補います。全件の回収を待たず、集まった範囲から照合と追加確認を並行して進め、確認期間・科目・抽出条件を残します。

2-3 リース候補一覧をまとめる

候補一覧は、リースを含むか判断する次の工程への引継ぎ資料です。収集管理リストをそのまま転記せず、照合結果を整理します。同じ取引先でも、別の設備・拠点は区別し、基本契約と個別注文を関連付けます。

候補一覧に残す情報
取引の内容
対象資産・利用内容・候補にした理由
根拠
契約・代替資料の保管先、照会で確認した事実
未確認事項
残る質問・担当者・期限
候補 ≠ リース確定不明な取引は確認待ちとして残します。適用指針の結論の背景では、リースを含まないことが明らかな場合にまで、識別判断を行う必要はないとされています。[2] 除外理由・根拠を残すと、後で見直せます。

除外理由の記録は本記事の管理上の提案です。資料不足を除外理由にせず、未回答・未回収も引き継ぎます。既存契約の識別判断では、採用する経過措置も確認します。[2]

四つの局面で、AIを実務に活かす

当事務所では、セキュアな設定のAIを活用し、契約調査の各局面で作業の効率化を図っています。

1-1 調査範囲の検討調査対象・質問を整理

AIで元帳や現場アンケートの回答を整理し、調査対象と追加質問の候補を抽出します。

1-3 収集計画依頼と進捗管理を支援

AIで依頼資料・担当・期限を整理し、収集管理リストや依頼内容の作成を支援します。

2-1 資料回収資料を読み解き、関連付ける

AIで契約書・別紙・補足資料から必要な情報を抽出し、関連資料のひも付けや不足資料の確認を支援します。

2-2 資料の照合漏れ・不一致の確認を支援

AIを契約資料・元帳・現場の一覧の照合に使い、不足や不一致の確認候補を抽出します。

AIが抽出・整理した内容は、専門家が確認します。

これから着手する会社、対応を急ぐ会社へ

当事務所では、準備状況に応じて、調査範囲・優先順位・役割分担を整理し、契約収集から実務を支援します。資料が揃っていない段階でも、ご希望の対応時期とあわせてご相談ください。

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出典・参考資料

  • [1]ASBJ 企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」(2025年4月23日改正反映)第3・5・25・26・33項、BC14・39項(結論の背景)。
  • [2]ASBJ 企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」(2025年10月16日改正反映)第5~8・118・119項、BC10項(結論の背景)。

本記事は一般的な情報の提供を目的としています。個別の適用は、具体的な事実と適用基準を確認してご判断ください。

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